映画館で映画を観るということ、観ていただくということ。


どこかで書いたかもしれませんが、昨年の第1回映画祭をシネマハウス大塚様で開催させていただいた時のことなんですけどね。数か月前の打合せで、とある監督の方とサシで打合せをしていたときです。その監督は「中村さん。これは全然失礼な意味ではないんですが」とことわった後「こんなにキチンした映画館が、こんな訳のわからないオジサンに、よく会場を貸してくれましたねえ」とおっしゃったんですがね。どこをどうとったら失礼にあたらないのか教えてもらいたいものなんですが。でもですよ、考えてみればそれはそうですよね。正直、私も意外でしたよ。ええと喜劇事件第1回映画祭が2025年11月30日でした。で、シネマハウス大塚様を予約させていただいたのはその年の6月です。これが一般的に早いのか遅いのかすら私には分かりません。ただ予約する前の3ケ月くらいはあーでもないこーでもない、って会場選びは異様に葛藤してましたね。最初に悩んだのは、その監督に言われた通りのことです。「そもそもですよ、私なんかに貸してれるんですか、映画館って?」ってことでした。結論で言うなら、もちろん映画館によるとは思いますが、貸してくださいましたね(まあ、だから2回も開催できたんですが)。そこで一度、ホッとしました。しましたが同時に今度はプレッシャーです。「え?映画館で私らの映画、映していいんですか?」ってことです。喜劇事件は今回も前回も、様々な方に参加していただきました。映画館で映画を流すことが日常な監督もいらっしゃれば、映画ではありませんが演劇、音楽でプロフェッショナルの方々にも監督として参加していただきました。その方々は劇場やライブハウスに立たれた経験がごまんとある。映画館ではありませんが、経験値があります。私も結構長く映画は作ってきましたが、映画館という聖域での上映は初めてだったんです。だからそう考えれば一番こういうのに慣れてないのは主宰の私(中村)だったんですよね。もちろん嬉しいですよ、自分らの映画が、本当に映画館のスクリーンに映るかもしれない。これは感動してました。はい、この段階も「かもしれない」でした。小心者で疑い深い私はまだまだ信じていないんです。この段階って言うか、正直最後まで疑ってましたけどね。
で、当日を迎えました。この当日って、前回の、1回目の時ですよ。行きに荷物いっぱい持って結構早めの電車に揺られながら「始まったら泣くだろうか」って一瞬考えたんですね。ともかく初回ですから、それこそ誰か小説化してくれよってくらい、トラブルばかりでした。そんなこともあって、でも「映画館で上映できるんだぜ」っていうのが、いくつもあった「支え」の中の一つだったんですね。それくらい私には映画館は「聖域」なんですね。だから映画館で「喜劇事件」に参加してくださった監督の皆さんの映画が流れた時、泣くんじゃないかなって思ったんですがね。結論言いますと、それどころじゃなかったから一切泣きませんでしたけどね。何がそれどころじゃないって、事務局は色々やることがあって、上映作品も横目でチラリ、チラリと観るくらいで鑑賞じゃなくて「ちゃんと映ってる?あ、映ってる映ってる」って、単なるモニターチェックでしたね、あれは。でもね、チェックでしたし泣かなかったですけど、メチャクチャ嬉しかったですね。カッコつける訳じゃないんですが、自分の映画より他の監督の作品を観た時、結構震えましたね。シネマハウス大塚様のスクリーンに、第1回目だったら久保田監督、戸枝監督、加藤監督、チーム高橋監督の映画が流れているのを観て「良かった。映ってる、少しは借りが返せた」って、うまい表現じゃないですが、ホッとしたっていうのがありました。相当無理をしていただいて、それでも参加してくださったメンバーですからね。それはもちろん監督さんだけじゃありません、スタッフさんも役者さんもですけど。でも、なんとかスクリーンに、映画館のスクリーンに皆さんの映画、流すことが出来ました。これで少しは借りを返したことにしてください、って言うのが色々混ざった感情の中に、確かにありましたね。それぐらい私にとっては「映画館のスクリーン」って貴重で重要なんです。特別なんですね。でも、映画好きな人は、皆さんそうじゃないですかね?
これもどこかで書いたと思うんですが、第1回映画祭以来、私は映画館で映画を観る回数がさらに増えました。「映画館」好きに拍車がかかったのかもしれません。最近つくづく思ったのは、私は結構恵まれた環境で働かせていただいているな、ってことです。私はこれでもいろいろやっていまして、まあ何一つ成功したものはないという、稀有な人間なんですが、一日で一番時間を使っているのは「会社員」です。正確には会社ではないのですが、まあスーツ着て自分なりには一生懸命働いています。意外だと思われるのは承知なんですが、結構真面目なので手抜きとかしてないと思います。ただ問題は、私が手抜きをせず一生懸命働けば働くほど、会社に膨大な損害を与えているようで大変心苦しいのですが、で。それはそれとして一生懸命働いて、まあその後帰りますよね。諸事情あって私はいま一人なもので、そういう意味でも自由でして。フラフラと10分くらい歩くと「神保町シアター」さんという映画館があるんです。ここで映画を観てから帰る、と言うことが時々あります。映画館で映画を観ながら、頭のどこかで「映画館で映画を観ていただく」ことをボンヤリ考えたりしています。観客の立場と監督・事務局の立場が右往左往しています。生意気ですね。「十年早い」って言われるかもしれませんがね。残念ながらオジサンにはその言葉、通用しませんよ。まあ、どこにも勝ち誇る理由はないんですけどね。
今回の写真は「早朝の渋谷で撮影した、なんかいっぱい貼られたシール」です。いけないですね、多分勝手に貼ってるんでしょうから。でもいけませんけど面白いですね。いけないんですけどね。